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正社員と非正規との賞与・退職金の格差は合法 最高裁

 最高裁判所は、10月13日、正規労働者と非正規労働者の間の賞与と退職金の格差が旧労働契約法第20条(期間の定めのあることによる不合理な労働条件の禁止)に違反するかが争われた2つの事件で、「不合理な待遇格差」ではないとし、格差を合法とする判決を下しました。

 まず、大阪医科大学では、正規職員については賞与が支給され、アルバイトには賞与が支給されていなかったところ、アルバイトに対し、賞与について新卒の正規職員の6割の支払いを高裁が命じていました。

 これに対し、最高裁は、正規職員は試薬の管理などに携わり、アルバイトとは業務内容に違いがあったと指摘し、アルバイトに賞与を支給しないことは、「不合理な待遇格差」ではないとしました。

次に、メトロコマース事件では、正社員については退職金が支給され、契約社員には退職金が支給されていなかったところ、契約社員に対し、退職金について正社員の基準で計算した額の25%の支払いを高裁が命じていました。

 これに対し、最高裁は、正社員と契約社員との間で役割などに差があったと判断し、契約社員として10年前後働いた点を考慮したとしても、退職金の不支給は「不合理な待遇格差」ではないとしました。

 今後、中小企業の同一労働同一賃金への実務対応にも大きく影響する判決となりました。ただ、アルバイトや契約社員に賞与や退職金を支給しなくても問題がないと安易に判断をして運用すると、同一労働同一賃金との関係では問題がないとしても、将来労働力が不足していく中で雇用が難しくなることが予想されます。

 正社員と非正規社員との間で、職務の内容や役割、責任の程度や職種変更の有無などの違いを就業規則や労働契約書で明確にして運用し、それぞれの雇用システムに応じた適正な賃金を支給することが今後求められてくると考えます。

 

大阪医科大学事件判決文

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/767/089767_hanrei.pdf

メトロコマース事件判決文

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/768/089768_hanrei.pdf